高崎神社

2008年12月アーカイブ

源氏物語千年紀に因みて

 紫式部は、完璧なプロットと精微な心理的手法により、世界最初の長編小説である「源氏物語」を誕生させた。虚構の世界を現実の世界の如くなし、人の心の陰影が写実的に描写され、理想と光明が苦悶と憂愁に推移する「もののあはれ」の世界を展開させた。
 この「源氏物語」が英訳されると、世界の文壇、学界に大きな反響をよんだ。近代比較文学の巨匠に、これは精神分析の小説であり、紫式部はフロイトよりも、ずっと分析的であると、言わしめている。
 このフロイトよりも分析的であると言われる、紫式部の分析力は、パッシブな感性によって発揮されていると言える。アクティブな感性では、人の心の深奥を洞察し、これを分析的な手法で精微に描写することは、不得意とする筈である。
 女性であり、女性特有のパッシブな遺伝子を有する紫式部により、このパッシブな感性が十二分に発揮させられて、日本古典の最高峰といわれる「源氏物語」は、生まれたのである。
 枕草子の作者である清少納言は、澄んだ鋭敏な目で周囲を観察して、平凡なる中に美を発見し、人生の断章を把握している。清少納言も、パッシブな女性特有の感性を発揮させて枕草子をものにしているのである。
 俗に言う文明化の過程において、女性はアクティブ化し、現代では、これを進歩と位置づけている。しかし、女性のアクティブ化が進めば進むほど、女性からパッシブな感性は減退し、女性特有の感性が十二分に発揮されることは不可能となり、現代的紫式部、清少納言の再現は絶望的となる。これは、人類にとって、進歩ではなく退歩であり、文明化ではなく非文明化なのである。

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