高崎神社

2008年08月アーカイブ

北京五輪アトラクション考 その1

 このつき八日、北京市内の「鳥の巣」と呼ばれる体育場で、中国を代表する映画監督の演出により、中国最古の楽器「缶」に模した打楽器を、人民解放軍兵士2008名が、手で打ち鳴らす大音響、この打楽器の大音響と共に、彼等が打ち鳴らしながら詠唱する古代中国の世界的思想家孔子の一文、「朋あり遠方より来る、また楽しからずや」の大発生により、北京五輪の幕は切って落された。
 北京五輪の冒頭に、孔子の一文の詠唱、この意外な企ては、中国が誇る悠久の歴史と現代中国を結びつけようとする野心的な企てであるとも言える。
 今の中国は、一党独裁の共産主義体制のままで、資本主義的手法を導入した変則的な国家であるが、かつての中国では、強固な共産主義体制のもとで、中華人民共和国の成立をもって国家の起点とし、過去は悪しき時代として否定、決別した筈である。また孔孟の思想も共産主義の理念に反するとして、1931年の中国共産党の創立に主要な役割を果たした陳独秀らによって否定され、排除されたのである。
 その中国が、悪しき時代と決め付けた過去の時代との結合を図ろうとするのは、演出家の創意か、それとも党の指示か、又は無作為か、定かではない。ただ言えることは、今の中国には、革命前の悠久の過去の時代との結合を図り、その効果により、国家に風格が備わることによって、国家の威信を高めると共に、国民に自信と誇りを抱かせる必要性が生じてきたのである。
 中国共産党が、蒋介石を打倒し、国民党を中国本土から駆逐して、中華人民共和国を成立させ、毛沢東が国家主席となったのが1949年である。この年をもって今の中国は建国されたと言える。建国以来、僅か59年しか経過していない国、歴史的尺度からすれば、世界でも稀にみる軽々な国ということになる。新興国といわれる米国ですら、1776年に独立宣言によって、イギリスの植民地から独立して建国された国であり、232年の歴史、即ち中国の優に4倍の歴史と、それに伴う伝統文化を保有しているのである。
 東側諸国の枠から抜け出して、世界の注目を浴びることとなった今の中国、建国以来、わずか59年の薄っぺらな国では、いくら捏ね回しても、国民の間に自信と誇りは生まれない。また外に向って、大国としての国威を発揚しようとすることも不自然であると感得したのではなかろうか。
 北京五輪のアトラクションが、中国が誇る悠久の歴史と現代中国を結合させて、内では自信と誇りを、外には国の威信を高めようとする企てであるとするならば、真に残念ながら、我が国は中国に大きく先を越されてしまったことになるのである。

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